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5 タスクブレイクダウン

1人の人間ができることなどたかが知れている。自分を過信するべからず。

様々な仕事が積み上がるこのマクドナルドの店を正常に運営していくためには、可能な限り多くの人のアイディア(脳)と時間(Body)=協力が必要です。

自分が考えている事がベストだなどという思い上がった考えでは、何もうまくはいかない。もし1度くらいうまくいったとしても、それはおそらく<まぐれ>です。

もしかしたら、いや、間違いなく、他の人の方が良い考えを持っている、それが例えトレイニー(新人)だとしてもです。そんな多くの人達の力を発揮してもらえるような雰囲気作り、関係作り=コミュニケーション、これが大事なのです。

SW(アルバイトのマネージャー)に原材料発注を担当してもらう、これも押付けではなく、力を借りているだけです。

SWにP/C(オーダーのコントローラー)をやってもらう、これも力を借りているだけ、だって俺よりも上手だし...(笑)
そこのところ勘違いしないでいただきたい。当然、クルーにカウンターで接客をしてもらうことも又然り、ミートを焼いてもらう事も然りです。

wrote:工藤信一 1997.11.27




組織運営は1人ではできない


そりゃそうでしょうよ、と聞こえてきそうですが、僕からすると人数ばっかりいて1人でやっているような店、現場、会社、けっこう見ますよ。

1人でやっているように見えるお店の店長さん、会社の社長さんは、もしかすると必要人数をただの”数”としか見ていないのかもしれませんね。

例えば同時進行の10のタスクがあるとしましょう。その全てを店長さんや社長さんがやるわけにはいかないですよね?部下の社員さん、アルバイトのみなさんに分担するわけです。

分担=分業=ブレイクダウンです。

この分担することを、作業として当たり前という次元で終わりにするのか?

それとも、その仕事をやってくれてありがとうと感謝するかで、分担の意味が大きく違ってきます。

え?なんで感謝するの?って思いますか?

だって部下の社員さんやアルバイトのみんながいなかったら、その10のタスクは店長、社長が1人でやらなきゃならないのですよ。

できます?

できないでしょ?

本来であれば店長、社長である貴方がやるべき仕事を、みんなが変わりにやってくれているんです。

来店されるお客様をお待たせすることなくお席までお連れすることができるのも、すぐにご注文をうかがうことができるのも、熱々の美味しいメニューを提供することができるのも、調理場が清潔な状態に保たれているのも

全部、働いてくれているみなさんのおかげです。

こういうの、当たり前って言ってバカにしている店長や社長の店は、まあ繁忙期には回っていないことが多いものです。

店長さんや社長さんのスタッフに対するスタンスは、もろに表れますからすぐにわかりますよ。

あなたは役職優先?それともヒト優先?


スタンスに絡むことですが、役職をもつと周りの意見を聞かなくなる人っていますよね?

なんでしょう、昨日までと人間の中身まで変わったんでしょうか。そんなことはないですよね?同一人物でしょ?

役職に就くと「オレが!」って思いがちなのは人の特徴なのかな。

けど、何から何まで「オレの言っていることが一番正しい!」なんてこと、あるわけがないのですよ。

こういう人って、自分よりも偉い人の言うことはよく聞くんです。

逆に自分よりも若いとか、経験が浅いとか、入ってきたのが後だとか、立場上で自分よりも劣勢に在る相手の意見やアイディアは聞きません。

もし心の中で「うわ!こいつ言ってることスゲエ!」って思ってもです。

けれど、前回(関連記事:【店長ワールド】その5:ガラス張の店舗運営論から考える情報の扱い)まででも書きましたが、役職持ちだからって偉いわけでもなんでもないんですよ。単に仕事上の関係であって、仕事から離れてひとりの人間対ひとりの人間って考えたら、役職の上下など大したことじゃない。

職位ってのは組織内の役割、どの歯車かってことに過ぎないですから。勘違いしちゃいけない。

みんな同じ人間なので、部下から自分よりも良いアイディアが出てくるのは当然でしょう?

それが、そのスタッフが昨日入ってきたばかりの新人さんだったとしてもです。

何年も同じ環境の中で物事を見てきた店長さんよりも、新鮮な視点で見るでしょうし、斬新なアイディアも出る可能性が高いです。

闊達な意見やアイディアが出る環境作りが大事


「じゃあアイディア出しましょう」って言ったところで意見やアイディア出てくるでしょうか?

残念です。出ません。

「急になんなの?」って思われて不審がられるのがオチですよ。

ここでアイディアが出てこないからって「やっぱりこいつらダメだわ」とか思ったり口にしたり態度に出しちゃったら...

はい!ゲームオーバー!

スタッフ達のガードはさらに強固になってしまいます。

こういうのは、時間はかかりますが段階を踏んで雰囲気作りから取り組むことが必要です。

以下にSTEPでお伝えしますよ。

STEP1、自分の口で直接に問いかける


まずは店長さん社長さんが、直で「これなんだけれど、○○君ならどうしたらいいと思う?」って問いかけしてください。

そんなことできっかよ!オレは忙しいんだ!

はい!そう思った貴方はゲームオーバー!

STEP2、素晴らしいアイディアだとその場で誉める


素晴らしくなかったらダメです。けれど大概はスゴイのが出てきます。そうしたら無条件に心から誉めてください。

「○○君!キミ天才だよ!」

とかでもいいでしょうし、

「この案はスゴイな!」

でも何でも、湧き上がってくる感動をそのまま伝えることが大事です。

その場でです。

STEP3、出てきたアイディアをそのまま実現させる


出来たら実現までの作業も○○君と一緒にやるといいんですけどね。

STEP4、○○君のアイディアであることを全体に告知


ここまでやれば、あとは情報が独り歩きしだしますからOK。

STEP5〜、1に戻る


次回は別な人に聞きます。複数に聞くのも良いですね。

○○君の件で、組織は少なからず動揺しています。○○君も「あいつ、ひいきされてんじゃね?」とか思われかねません。

なので人を変えます。複数に聞くのは「あ、店長やっぱり聞くんだ」って事実を浸透させるためです。

そしてまた誉めて、実現、告知。

これをロールしていくと、少しずつですが「オレにも聞いてほしいな」って空気になってきます。

もう一息。

さらに継続していくと、現象面で2つのことが発生します。

1、スタッフの方からアイディアを持ってくるようになる

最前線の現場で働いているスタッフは、問題点を正確に把握していて、改善のための具体的なアイディアを持っていることがほとんどです。

けど、意見を聞かない組織では「言ってもムダ」と思っているので、淡々と働くだけで、アイディアは胸の中に秘めたままにしています。

こういった意識の高い人材が、組織が良い方向性に向きだすと積極的に行動を起こし始めます。

店長さん社長さんは、しっかり受け止めてあげてください。

2、アイディアを聞く行動が伝染していく

すぐに直属のスタッフも同じことをするようになってきます。目の前で起きていることを見てますからね、そうなりますよね。

そのうち「店長これどうですか?」って持ってきたアイディアが「これ、先週に採用したAさんのアイディアなんです。Aさんってスゴクないですか?」みたいなことが起きます。

いやぁもう最高ですね!

そのアイディアは絶対に採用です。Aさんには店長から直接に感謝の気持ちを伝えてください。

Aさんも嬉しいでしょうし、その話を持ってきたスタッフも嬉しい、そして店長である貴方も良いフィールを感じることと思います。

報酬は払いましょうね


公平な評価をしましょう(関連記事:【店長ワールド】その3:公平な評価を行うことの深い意味を考えてみましょう)でも書きましたが、やったことはやっただけ評価するべきです。

良いアイディアを評価するのもありでしょうし、
積極的な姿勢を評価するのもありでしょう。

アイディアを出すことも仕事として認めていますよっていうことを、評価として表わしていくことで、組織はさらに高いレベルへとパワーアップしていきます。

まとめ


こうやって書いていて確信しますが、評価することは、ほんとうに大事です。

雇用情勢が変化して、正社員よりも契約社員や派遣社員が多くなった昨今、契約書をもってして評価の代わりとしているきらいのある企業が増えているように感じます。

誤解してもらっては困るのですが、お給料を上げろって言っているのではないのです。

実現したこと、出来なかったことを認めなさいって言っているのです。

評価ってのは、仕事ぶりをしっかりと見ていないとつけられないものなので大変ですけれどね。どこを見るのかの指標も必要ですし、やるとなったら準備が必要ですよ。

店長さんや社長さんが多忙なのはわかります。けれど、だからといってやらない理由にはならないし、そう言ってやらないから今そうして多忙なんじゃないのかな?って思います。

おっと、評価について書き出すとストップできなくなるので今日はやめときますね。


次回は『弱者を守る』をお送りします。

こちらの記事もどうぞ


・【店長ワールド】32歳の僕がスタッフ向けに書いた文書が19年ぶりに発掘されたよ:その1
・【店長ワールド】32歳の僕がスタッフ向けに書いた文書が19年ぶりに発掘されたよ:その2
・【店長ワールド】その3:公平な評価を行うことの深い意味を考えてみましょう
・【店長ワールド】その4:組織のフラット化から紐解くリーダーの在り方
・【店長ワールド】その5:ガラス張の店舗運営論から考える情報の扱い